じつは、CV4055(6CH6)シングルアンプの製作は3台目だ。こってりした、独特の艶っぽいという音色の再現が目的だったのだが、どうにもそのような音が出ないことがわかった。個人で音の受ける印象が異なり、自分の印象とまるで正反対のようになるのは腑に落ちないけれど、これはこれで魅力的な音を持っていると思ったので本番機の製作に至った。
回路は初段が6BQ7Aで、出力段がCV4055という構成だ。CV4055にはKNFがかけられており、実験機ではP-G帰還となっていたのを初段カソードから出力段のプレートにかけるP-K帰還に変更した。当初の目的の音は出なかったし、P-K帰還のほうが印象が良かった。P-K帰還はコンデンサでDCをカットすると時定数が増えるため、あえて直結にしてある。
特性を上記に示す。出力は0.9W~1.0Wと控えめなのは、出力管を酷使させないため。P-K NFBは2.7dBと少量かかっている。私が製作するアンプとしては利得が5.6倍~5.7倍と低めになっている。詳細な特性はこちら。
今回ボンネット付きシャーシを使ったのは、手持ちの電源トランスを使いたかったのと、電源トランスの端子に触れて感電するのを避けるため。ボンネットに隠れるのでレイアウトは実験機のをそのまま踏襲した。
このシャーシはアルミの厚さが1.5mmあるが、やわらかいので加工はラク。ただ表面にアルマイト加工がされており、削らないと導通しない。ボンネットには折り返しがあり、そのぶんシャーシ上のパーツに配置の制限がある。ボンネット付きシャーシの詳細はこちら。
いつものようにブツ撮りをしたので掲載。
ボンネット付きは感電や火傷の心配がなく家族やペットにも安心。ボンネット上は暖かいので、ニャンコの昼寝にちょうど良いかもしれない。
ボンネットの固定に使うアングルはネジ止めされており、シャーシ加工や組み立ての際に外せるようになっている。
+B用電源トランスが横倒しになっているのは、誘導ハムを減らすため。Lアングルで取り付けてある。
シャーシ内部。シャーシ上のトランスが大部分を占めているのでスカスカ。
実体図もどきを添付。
+B電源基板の平ラグパターン。FETは平ラグの固定スペーサーに共締めする。
駄耳の私による試聴結果。真空管アンプ由来と思われる艷やかなボーカル、透き通った音で、ニアフィールドでは低音に量感がある。直熱管シングルアンプとは音色がたぶん違うと思うけど、これはこれで十分満足できるし私には聴き分けできないだろう。