おんにょの真空管オーディオ

おんにょの真空管オーディオ

古(いにしえ)の真空管を使った好音質のアンプで音楽を聴きましょう。(お約束事) 追試は歓迎しますが自己責任でお願いします。

VT-25シングルアンプ・固定プレートの作成

OPTの固定プレートとVT-25のソケットプレートを作成する。

最初に穴開け図を作成。

t1.0mmのアルミ板に、印刷してカットした穴開け図を貼り付けてケガキ線を入れる。油性ペンで印をつけた。当初はアルミ板をカットしてから穴開けをやろうと思ったが、穴開けの後にカットすることにした。

いきなり完成したプレート。アルミ板のカットはカッターで切り込みを入れて折り取るのではなく、ピラニア鋸を使った。そうしないと板が曲がってしまうから。穴開けやカットよりバリ取りのほうが大変だった。

これで大変な金属加工が終わってホッとしている。

 

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穴開け図にプレートを重ねてみた。十字の中央に穴が開いていればOK。アルミ板のカット寸法はいい加減でも構わない。

OPTをトランスケースに入れるところ。左右チャンネルでOPTの向きが違うので、油性ペンで書いておいた(わかりにくいけど)。


ケースに入れたところ。OPTの向きを反映させるため、マスキングテープに油性ペンでLRを書き込んだ。余った配線は画像のように丸めておけばシャーシ内でぐるぐる巻きにする必要がない。

実験機を解体したので、この後は仮組みをする予定。さて、パーツの干渉なしに組めるだろうか。

VT-25シングルアンプ・シャーシ加工

VT-25シングルアンプのシャーシ加工を始めた。こういう作業は始めるまでが億劫でなかなか取り掛かれないが、一旦始めてしまうと騒音が出るから早く終わらせたいと思うものなんだね。一気にやると疲れが出るし集中力が途切れるのでミスや怪我を誘発する。だからそうなる前に作業を中止するようにしている。時間があってもできない。

シャーシは株式会社奥澤のO-45、W300mm×D170mm×H50mmでt1.5mmのアルミ。穴開け図を印刷してシャーシに貼り付け、定規とカッターでケガキ線を入れる。十字の中央をオートポンチでマーキング。

 

シャーシ加工は電源トランスの角穴から始めた。ステップドリルで丸穴を2個開け、コッピングソーの刃を差し込んでギコギコ一周くり抜く。騒音低減のため、裏側に消しゴムをガムテープで貼り付けている。

ロッカースイッチとACインレットの角穴が開いた。ロッカースイッチはノギスで測りながら13mm×19.2mmで開けた。ACインレットは角R仕様。これは四角に開けると四隅が見えてしまうため。

サークルカッターで真空管ソケット穴を開けているところ。刃のあるほうを持ち上げ気味に回すのがコツ。

後は小さな丸穴だけ。ドリル刃の1.5mmで開け、2.5mmで広げ、穴がずれていたら丸ヤスリで修正、3.2mmで広げ、以降4.5mmとステップドリルで広げていった。

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穴開けが終わったシャーシ。

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反対側。

次は裏蓋の穴を開ける。横山テクノにt1.2mmのアルミ板を298mm×166mmにカットしてもらったものを入手。シャーシと裏蓋の固定穴は曲尺で測って正確に開けた。それでもヤスリで修正が必要だった。

後はゴム足と放熱穴をボコボコ開けていった。切削屑が沢山出るのが嫌。バリ取りが済んで裏蓋の作成は終了。

金属加工はあとOPTの固定プレートとソケットプレートの作成が残っている。まあボチボチやるかあ。

VT-25シングルアンプ・レイアウト検討その2

シャーシ上面にはトランス3個と真空管が4本だから、できるレイアウトは限られる。考えた2案で検討を進める。

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これは拙VT-62シングルアンプと同じ配置でVT-25を両端に置いたレイアウト。

レイアウト図を印刷し、シャーシにトランスと真空管を並べてみる。自分としては気に入っている配置。

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次にVT-25を中央に配置したレイアウト。

 

VT-25がせり出しているのは電源トランスとの間に平ラグがあるため。

電源トランスからOPTへの誘導ハム実験。VT-25を両端に置いたレイアウト。OPTはケースに入れるため、斜めに配置する。誘導は少なめ。

試しにOPTを斜めにしないで配置してみた。それぞれのコア軸が直交するのが最も誘導が少なくなるが、画像の配置では誘導が多くなってしまう。これはコア軸の中心が直交からずれているため。

VT-25を中央に配置したレイアウト。それぞれのコア軸が直交しないため、誘導が多くなる。

このように配置できれば最も誘導が少なくなるが、OPTの固定バンドを加工しないと取り付けられない。

誘導ハム実験からはVT-25を両端に置いたレイアウトのほうが良いという結果になった。

高耐圧MOSFET

真空管アンプのリプルフィルタに使える高耐圧MOSFETを挙げてみた。基本的にソースフォロアで使うので、順伝達アドミタンス|Yfs|の高いほうがリプルフィルタの出力インピーダンスが低くなるはず。ただデータシートの条件は真空管アンプで使う100mA程度に対して数Aと大きいので、果たして実使用上同じなのかはわからない。

今回はパッケージがTO-220のフルモールドのものとした。これはシャーシやヒートシンクに固定しやすいから。

 

実際にFETリプルフィルタの出力インピーダンスを求めるには電流注入法でやるのが良い。ただ私の実験では測定電圧でインピーダンスの値が変動してしまうので、FETの相対的な出力インピーダンスの大小しかわからない。
https://onnyo01.hatenablog.com/entry//201606/article_8.html
https://onnyo01.hatenablog.com/entry//201606/article_16.html

一般的に高耐圧MOSFETVgsは3~4Vあるので、FETリプルフィルタの出力電圧を高く保ちたい場合にはFETでなくトランジスタを使う(Vtは0.6Vくらい)、小さなチョークコイルでLCフィルタを通す(FETリプルフィルタの入力のリプルを小さくする)、入力電圧を嵩上げする(ex.6.3Vを整流して加える)などの方法がある。

 

FETリプルフィルタの出力インピーダンスは数Ωで、DCから20kHzまではほぼ一定。グラフで高域が上昇しているのはゲートの発振防止抵抗によるもので、出力にコンデンサを入れることで防止できる。AC的には、+BはGNDとショートとみなせるので、ステレオで左右チャンネルを共用したり、電圧増幅段へのデカップリングを省略してもクロストークが悪化しない。

 

ご参考

 

VT-25シングルアンプ・実験機の組立と評価その2

VT-25シングルアンプ実験機は、6dBのNFBをかけた際にSP負荷オープンで0.1μF~0.22μFを接続した時に発振した。NFB抵抗に位相補正容量1000pFを追加したところ発振しなくなった。今回は位相補正容量を追加した時の諸特性を測定した。

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回路図。C6が追加した1000pF。

諸特性を測定。周波数特性での高域-3dB周波数が76kHzから69kHzになった他は変化無し。

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周波数特性の比較。

歪率特性。10kHzがすこし良くなったかなという程度。

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(10kHz方形波、ダミーロード8Ωでの出力2Vp-p、100mV/div(プローブ10:1)、20μS/div)

SP端子に0.047μF~0.47μFのコンデンサをつないで方形波観測し、ダミーロードをオンオフしてみるが、リンギングはあるものの発振はしなかった。

初段と出力段で歪み打ち消しがされているかの確認のため、6DN7を別の球に挿し替えたところ、殆んど変化が無かった。そこでVT-25を別の球に挿し替えて歪率特性を測定した。

2次歪みが多くなったせいか、カーブが直線状になった。110Hzが悪めなのはVT-25のrpが5kΩあるためかなあ。

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OPTをもう1つのものに交換して周波数特性を測定。

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OPTのNo.1とNo.2の比較。ほぼ同じだった。

実験機を製作したわりには問題点が少なく、このまま本番機を製作しても良いと思われる。

VT-25シングルアンプ・実験機の組立と評価

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VT-25シングルアンプの実験機を組み立てた。片チャンネルのみ、入力ボリューム無し、電源スイッチは省略とした。+B・+B1・-C・-C1は片チャンネルだと電圧が高くなってしまうため、ダミー抵抗を付けてある。

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回路の電圧を赤字で記入した。AC100Vが1.5%高いが、回路の電圧はほぼ設計どおりだった。簡単に特性をチェックし、とりあえず問題なさそうなのでNFBをかけることにし、利得が半分になるNFB抵抗値を探ったら1kΩとなった。

諸特性を上記に示す。無帰還での残留ノイズは0.18mV、NFB後は0.08mVと非常に低い。

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周波数特性。高域にすこしガタガタがあるものの、おおむねOK。

歪率特性。1kHzと10kHzは初段と出力段の歪み打ち消しがされているためか非常に低い。110Hzは位相のずれのせいかわからないが、あまり打ち消しが起きていない。VT-25のrpは5kΩと高いので、その影響かもしれない。

SP端子を負荷オープンで0.1μF~0.22μFを付けたら30kHz付近で発振した。NFB抵抗と並列に1000pFを入れると発振しなくなることがわかった。

次回は1000pFを追加して特性を再度調べるつもり。また歪率特性に関しては、他の6DN7ではどうなのか確認する予定。

 

超小型真空管アンプ

エレキのエフェクターに使うアルミケースを入手した。これはHammondの1590DDでアルミダイカスト製。Amazonで1,680円(2024年2月25日現在)だった。

サイズはW188mm×D120mm×H33mm(裏蓋を入れると37mm)で、厚さは2mmくらい。重さは525gで結構重い。いくぶん上辺がすぼまった台形をしており、上面はW186mm×D118mm。

6本の皿ネジで裏蓋を固定するようになっている。

 

 

これで真空管アンプを作ってみたらどうか。試しに拙PCL83シングルアンプ ではどうなるかやってみた。

電源トランスは春日無線変圧器のH9-0901、OPTは東栄変成器のT-1200R7Kとした。かなりタイトだがなんとか収まりそうだ。ARITO's Audio LabのSE-7K2Wでも大丈夫と思われる。

ただ3PのACインレットが電源トランスと干渉するかもしれない。電源トランスを嵩上げして逃げる手がある。あるいは2Pのメガネ型インレットはどうだろうか。最悪ゴムブッシングを噛ましてACコード直出しとすれば良い。

平ラグに電解コンデンサを立てたら内部の高さが30mm程度なのでダメかもしれない。寝かせて配置するなど考慮する必要がある。

 

VT-25シングルアンプ・平ラグ作成

当初はバラックで特性を確認するつもりでいたが、平ラグを作成し実験機を組んで確認しようと考えを変えた。

+B・+B1・-C電源の平ラグパターン。

平ラグに組んだ電源部。うひゃー詰めすぎ!

2SK3234はシャーシに取り付けて放熱させる。

 


アンプ部の平ラグパターン。

2SK30AはId=1.5mAで選別し、Vgsが近い2本を選んだ。これは半導体で左右チャンネルに利得の差が出ないようにするため。真空管は本数が限られているし、残留ノイズが少なく両チャンネルで利得が揃うように差し替える。

電解コンデンサ下の抵抗2本。実験で抵抗値の変更が生じたら面倒だ。

なお、もう1つのチャンネルは、回路のディメンジョンを決めた後に製作する。

覚え書き

2SK30A-Y Id=1.5mA VGS=-0.407V, -0.406V

1N4735A Id=1.5mA Vd=6.03V, 6.03V

 

VT-25のフィラメント電源の平ラグパターン。

平ラグに組んだフィラメント電源。底蓋につかえないように高さを48mmに抑えてある。実際に点火実験を行ったところ、片方が6.94Vと低めに出たので330Ωに33kΩを並列にしたら7.00Vとなった(右側の平ラグ)。

 

VT-25シングルアンプ・平ラグパターン作成

レイアウト検討ではエイヤーで平ラグの極数を決めてしまったけど、その極数で本当に乗るのか確認する必要がある。そこで平ラグパターンを作成することにした。

 

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現状の回路図を上記に示す。+Bが392Vで、AC100Vが103Vとかになった場合、404Vまで上がって電解コンデンサの耐圧を超えてしまう。+Bに繋がっている下流コンデンサは6DN7がヒートアップする前には+Bの電圧がかかる。なので電解コンデンサの耐圧を400Vから450Vに変更した(C11・C5)。まだ回路のディメンジョンは変わると思う。

あと+B1・-CのCRフィルタを2段から3段に変更した。これは手持ちコンデンサの活用と、残留リプルをなるべく低くしたかったため。

平ラグに乗せる+B・+B1・-C電源の回路図。

作成した電源部の平ラグパターン。2SK3234は平ラグのスペーサーに共締めする。1Pぶん足らなかったので、立ラグ小を取り付けて中継する。

アンプ部の回路図(丸で囲まれたところ)。C3のカップリングコンデンサは迷った末、平ラグパターンに入れなかった。

アンプ部の平ラグパターン。500Ωの半固定は値を決めたら固定抵抗に変更する。C3をむりやり乗せようか考え中。

 

(2024.02.24追記)

39kΩと100kΩを入れ替えてC3(0.1μF630V)のコンデンサを平ラグに乗せるように変更。

(追記ここまで)

 

VT-52のフィラメント電源の平ラグパターン。LM350Tは平ラグのスペーサーに共締めする。LM350Tはフルモールドではなく極板が露出しているタイプなので、シリコンラバーシートの他に絶縁ブッシュが必要。少量販売してくれると嬉しいのだが。

VT-25シングルアンプ・レイアウト検討

VT-25シングルアンプのレイアウト検討をしてみた。シャーシは株式会社奥澤のO-45、W300mm×D170mm×H50mm、t1.5mmのアルミを想定している。

VT-62シングルアンプを元にレイアウト検討をしたので、基本的にシンメトリー配置だ。電源トランスを端に置くオーソドックス配置はシャーシを大きくしないと入らず玉砕した。

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第1案。VT-25を端に、6DN7を中央に置くレイアウト。CRや半導体パーツの殆どを平ラグに乗せるようにした。電源トランスの周りに平ラグが集まっている。

VT-25はST-16で背が高いので、ソケットプレートを作って10mm程度沈めるようにする。

12Pの平ラグは電源部で、上下にコンデンサがはみ出るためにSP端子が置けなかったのはVT-62シングルアンプと同じ。5Pの平ラグはフィラメント電源、8Pの平ラグはアンプ部としている。

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第2案。VT-25を中央に持ってきた。こちらのほうがレイアウトが楽だった。ただVT-25のプレート配線が遠くなるのが気にかかる。

まだ検討段階なので、後々変更するかもしれない。VT-25を端に置くのか、中央に寄せるのか、実際に真空管を並べてみて判断する。

VT-25シングルアンプ・特注電源トランス

12B4Aシングルアンプが一段落したので、中断していたVT-25シングルアンプを再開することにした。当記事は年頭に上げた構想の続きとなる。今回は特注電源トランスだ。

電源トランスはいつもお世話になっている西崎電機に特注する。送った見積もりはこんなふう。
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西崎電機様
いつもお世話になっております。

伏せ型電源トランス(上下カバー付き)の見積もりを
お願いします。

1次 0-100V 50/60Hz

2次
0-320V 0.1A 32.0VA
0-115V 0.1A 11.5VA
0-8.5V 2.2A 18.7VA
0-8.5V 2.2A 18.7VA
0-6.3V 2.0A 12.6VA
-------------------
計 93.5VA

端子数:12
希望個数:1個

※負荷をかけた時の電圧で設計して下さい。
 電圧が高めに出るのは構いません。
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発注してから手元に届くまで、発注日を加えると4日で非常に早かった。どうもありがとうございます。早速テストを始めた。

届いた電源トランス。W89mm×D76mm×H72mm(シャーシ上) 重量:2.2kg ボルト間:72mm×59mm(M4) シャーシ穴:W60mm×D54mm

AC100Vを印加して2次の電圧を確認する。なぜかテスターリードを当ててもDMMがちゃんと表示せず、みのむしクリップで端子を咥えたら測定できた。電圧は高めに出ておりOK。

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バラックでの実験風景。だんだん増やしていったのでゴチャゴチャ。DMMの表示はVT-25のフィラメント点火実験。

負荷ありの電圧を測定。ヒーターは6.3Vのところ6.2Vで少し低め。+Bは設計での416Vに対し428Vで少し高め。115Vは6DN7のカソードフォロア段で、負荷有りの電圧は出たとこ勝負でOKなので測らなかった。

VT-25のフィラメント電圧は7.0Vを予定している。設計どおりの電圧となった。

LM350Tの入出力電圧をオシロで表示させた。LM350Tの入力(黄色)は下限が10Vで出力(F1)が7Vとなり、入出力電位差は3Vとなった。LM350Tの最小の入出力電位差は実測で約2.6Vだったのでクリアしている。残留リプルは0.29mVだった。

 

12B4Aシングルアンプ・完成

きっかけはヤフオクARITO's Audio LabのSE-5K2Wを落札したことだった。このOPTは角型ケース入りの超小型で出力容量2W、1次5kΩ(ULタップ付)、2次4-8-16Ωで最大DC重畳電流は30mA。

その頃ミニオフ会で6AN8Aを4本頂いた。6AN8Aは電圧増幅の5極管と、同じく電圧増幅の3極管が1つの管に封入されている複合管だ。3極管のμ=21。ヒーターは6.3V0.45A。類似管には例えば6U8があるが、ピンコネが異なるため差し替えできない。

6AN8AとSE-5K2Wで真空管アンプを製作してみようと思い立った。OPTの1次インピーダンスは5kΩなので、出力管は3極管として、内部抵抗が低いほうが望ましい。ただプレート損失が大きい出力管だと、OPTの出力容量2Wを超えてしまい、軽く使ってやる必要がある。それにOPTが超小型なので、出力管もそれに見合うMT管が良いと思う。

手持ちのMTの3極管に12B4Aがある。これは内部抵抗が1.03kΩと低く、最大プレート損失は5.5Wとなっている。ヒーターは6.3V0.6Aないし12.6V0.3A。以前12B4AでSRPPアンプを組んだことがある。

 

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12B4Aの特性図に5kΩのロードラインを引いてみた。動作点はEb=167V・Ip=25mAで、低めのプレート電圧がフィットするようだ。プレート損失は4.2Wで、最大プレート損失5.5Wの76%となる。

回路は6AN8Aの5極部で電圧増幅を行い、3極部でカソードフォロア、12B4Aをドライブする。電源トランスは春日無線変圧器のH12-0429を候補としたが、ヒーター電流がわずかに足らないし、受注生産となっていることから、西崎電機に特注することにした。

特注した電源トランス。2次を6.3V1.2A×2、160V120mAとした。

諸特性を上記に示す。1kHzにおける歪率5%での出力は1.3W、高域-3dB点の周波数は170kHzと非常に伸びている。オーバーオールNFBは4.4dB~4.7dBで、元々は6dBかける予定だったのが、電圧増幅段の利得を調整したため少なくなった。

NFBをかけても安定しているからもっとかけてもよいが、私のオーディオシステムではボリュームを上げる必要があることからNFB量を増やすことを避けた。だから特性重視ならもっとかければよいし、位相補正容量をフィッティングする必要があるだろう。

Analog DiscoveryによるNFB有りでの周波数特性。位相補正容量は入れていない。OPTの高域特性は優秀で、素直に落ちている。

クロストーク特性。20Hz~20kHzでは-70dB以下。

Lchの歪率特性。電圧増幅段と出力段で歪みの打ち消しを行ったため、NFBが4~5dBでも低い歪率となっている。

Rchの歪率特性。

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(10kHz方形波、ダミーロード8Ωでの出力2Vp-p、100mV/div(プローブ10:1)、20μS/div)

SP端子に0.047μF~0.47μFのコンデンサをつないで方形波観測し、ダミーロードをオンオフしても発振しないことを確認。

使用機材
オシレータ TEXIO AG-205
ミリボルトメータ LEADER LMV-181B
デジタルオシロスコープ IWATSU DS-5105B
オーディオアナライザ Panasonic VP-7721A
ANALOG DISCOVERY 2
PC Lenovo ThinkPad E14 OS Windows11 Home 23H2

 

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レイアウト図。アルミシャーシは株式会社奥澤のO-27で、サイズはW250mm×D150mm×H40mm、t=1.0mm。A5052のアルミは適度な硬さがあり加工しやすい。パーツをゆったり配置したので込み入ったところがない。電源部は平ラグに組んだが、アンプ部は立ラグによる手配線とした。

シャーシと裏蓋の穴加工は自分で行い、シルバーメタリックに塗装した。磨き仕上げだが、この色は傷が目立たない。

今回もブツ撮りをしたので掲載する。

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シャーシはシルバーの塗装だが、いかにも普通な塗色で無難だ。でも自作のスペシャル感が薄れてしまった。

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ツマミはたまたま解体したアンプのを流用したが、ロッカースイッチのネオンランプやヒーターの橙色にマッチして良いと思った。ツマミはLEXだが、丸三電機はツマミから撤退して入手困難になってしまった。

 

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シャーシ内部。+B電源のダイオードとSP端子が接近しているが、ノイズは問題にならなかった。残留ノイズが0.1mVレベルだと影響が出てくるかもしれない。OPTの余った配線はトランスケース内に押し込んであるのでスッキリしている。

 

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カップリングコンデンサ0.33μF450Vは緑色の安価なやつだが、グレードアップしても音色は変わらないんじゃないのかな。

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駄耳の私による試聴結果は、OPTが超小型なもののスケール感があるし、高解像度で低音もよく出る。女性ボーカルの艶のある声は合格。

久しぶりに、私より耳の良い!?妻の試聴結果。
・かわいくて光ってる!
・ひとことで言うと、すっきりしてて聴きやすい
・解像度・再現性がいい
・圧迫感がないから聴いてて心地よい
・中高音が綺麗に出てると思う
・トランスが小さいわりにはしっかり鳴ってくれている

12B4Aシングルアンプ・歪みの打ち消し

12B4Aシングルアンプでは電圧増幅段と電力増幅段で歪みの打ち消しをしてみようと思う。初段のプレート抵抗を100kΩから半分の50kΩにしたところ(NFB抵抗はそのまま)、波形の上下がほぼ同時にクリップすることがわかった。ただ利得が8.6倍と、想定していた利得よりかなり低くなってしまう。

プレート抵抗を50kΩから150kΩまで振ってみて、1kHzにおける最低歪率がどのようになるのか確かめた。その結果、62kΩから68kΩのあたりで歪率が最も下がることがわかった。結局プレート抵抗は62kΩとした。

回路図に実測の電圧を赤字で記入。

詳細な諸特性を測定。高域-3dB点の周波数は170kHzと変わらなかった。歪率5%での1kHzの出力は1.2Wから1.3Wに増加。これはクリップ波形が変化したことによる。NFB量は6.2dB~6.3dB→4.4dB~4.7dBに減少。利得が低くなったのでNFB量も減った。DFは4.6→3.9~4.0に減った。

Analog DiscoveryによるLchの周波数特性。ごくわずか100kHz付近が盛り上がっているが、位相補正容量は不要と判断。

Rchの周波数特性。

クロストーク特性。20Hz~20kHzでは-70dB以下となった。

Lchの歪率特性。バナナみたいなカーブになった。1kHzにおける最低歪率は0.1%。

Rchの歪率特性。Lchに比べて2次歪みが多め。1kHzにおける最低歪率は0.1%。

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(10kHz方形波、ダミーロード8Ωでの出力2Vp-p、100mV/div(プローブ10:1)、20μS/div)

SP端子に0.047μF~0.47μFのコンデンサをつないで方形波観測し、ダミーロードをオンオフしても発振しないことを確認。

NFBをかけても安定しているのでもっと増やすことは可能だが、利得が低くなり私のオーディオシステムではボリュームを上げないといけないので、これで良しとした。

再び3階自室で試聴。無帰還の状態から音色が変わった感じは無い。数日聴いてみて問題点抽出を行う予定。

12B4Aシングルアンプ・NFBをかけてみる

とりあえず問題はなさそうなのでNFBをかけてみることにし、NFB抵抗は1.3kΩとした。高域に小ピークが見られるので並列に330pFを接続したところ、フラットになった。

Analog DiscoveryによるLchの周波数特性。

Rchの周波数特性。

詳細な諸特性を測定。高域-3dB点での周波数は168kHz~170kHzまで伸びた。1kHzにおける歪率5%での出力は1.2Wだった。DFは4.6。残留ノイズは0.2mV~0.3mVまで減少した。

クロストーク特性。20Hz~20kHzでは-69dB以下となった。

Lchの歪率特性。110Hzが少し悪めだが、三日月型になった。

Rchの歪率特性。

これは12B4Aのグリッド波形(黄色)とSP端子の波形で、カットオフによるクリップのほうが先に来ている(あまり自信なし)。対策としては+B電圧を上げる、12B4Aのプレート電流を増やすなどが考えられるが、12B4Aを酷使させたくない。そこで、電圧増幅段を歪ませて、なるべく上下クリップが同時に来るように対策しようと思う。

12B4Aシングルアンプ・動作確認

組立が完了した12B4Aシングルアンプの配線チェックをする。回路図と突き合わせて誤配線や配線忘れを確認。

+BのGNDショートがないか確認した後、真空管を挿して電源をオンし+Bと12B4Aのカソード電圧を監視する。大体設計値どおりになったら各部の電圧を確認。問題ないようだ。

SP端子にACレンジにしたDMMを接続し、ボリューム最大でRCA端子に指を触れ、電圧が上昇するのを確認。今回も動作一発OKだ。

測定器をつないで特性をチェック。バラックでの特性とほぼ同じになったが残留ノイズが4mV前後あって多い。12B4Aを別のに挿し替えてみたが変わらず。6AN8Aを挿し替えたところ5本中2本で0.5mV~0.9mV程度になるものがあり、6AN8Aのヒーターハムを引いていると思われる。6AN8Aは5本しかないので、その2本でいくことにする。

回路図に赤字で電圧を記入した。

無帰還での特性を測定。周波数特性は高域-3dB点が105kHzと非常に伸びている。DFは1.9~2.0で無帰還アンプの普通のレベル。残留ノイズは0.5mV~0.6mVだが、これ以上下げるには6AN8AをDC点火するしかないように思われる(やるつもりはない)。

Analog Discoveryによる周波数特性。高域特性が素直だ。

無帰還だが3階自室で試聴してみた。いきなりスケール感のある音が出てきた。高解像度で低音もよく出る。利得が23倍~24倍と多いことを除けば完成レベルだ。

次回はNFBをかけて特性を調べる予定。